2014/08/13

かすかに触れられた現実と記憶として描かれた幻想 - 「真菜 21」あらすじとレビュー(内田祭り最終回)


美しいです。掉尾を飾るにふさわしい物語。
青木無常でごじゃりまする。


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季節感なくて申し訳ない(^_^;)。_(_ _)_

そういうわけで六回にわたり開催してきた
内田眞由美祭りも今回でいよいよ最後となりますよ。
言えない恋心』の最後の短編への
ネタバレあらすじとレビューでございます。

その最後にふさわしい、美しい物語でありますよ。
どうぞ。




   「真菜 21」ネタバレあらすじ


 十七歳の冬、僕は彼女に別れを告げられた。

 まだ雪が積もっていて長靴でなければ外は歩けなかった。ザクザクという並んだ二人の足音だけが聞こえる。
 話せば話すほど白い息を蒸気機関車のように吹き出し、赤く染まった鼻を二人して笑い合った。
 いつもの帰り道、何も変わらず自宅まで送り届け、玄関に入るまで見送るはずだった。
(p.162)
だが真菜はアイドルになるべく東京にいくというのだった。



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 高校卒業してすぐに就職し東京に出たのは思い出が詰まりすぎた山形から離れたかったから。

 そんなある日、卒業文集をふと見返した時、段ボールの底に昔の携帯を発見する。

 なつかしさに駆られ、そこにあった真菜のメールアドレスに送信したところ、思いがけない返信が着く。

 あいさつめいた内容とはいえ、翌日もメールのやりとり。



 駅前の本屋のアイドル雑誌コーナーで、彼女の姿をさがすが、モノクロの一ページだけ。数人の女の子たちと写る真菜の寂しそうな笑顔に

 あれから四年も経つというのに……
 わざわざ上京までしたのに……
(p.172)
と感じてしまう。



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 数日後、再び彼女からメール。
 会うことになる。

 あたりさわりのない会話。仕事の話をしたがらない彼女。

 現状を気にしつつも、それだけで彼女を見送る。



 帰宅した真菜は二週間前の出来事を回想する。

 グループ解散をマネージャーから告げられたこと。

 スカウトされて、バイトとレッスンのくりかえしの、過酷だが未来への夢があふれた時期を経、グループが結成されたがアイドルの競争は想像以上に厳しく、グループの仲もやがてぎくしゃくしてしまい、解散へと至る。



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 そんな時にきた、将人(=僕↑)からのメールだった。

 合わす顔がないという気持ちと会いたいという気持ち。逡巡し、どうしても気持ちを抑えられず、連絡した。

 だが、将人にはいえない問題を彼女は抱えていた。



 食事会で知り合った飯田という男。
 テレビ局の優しい人といわれ連絡先を交換した人物だったが、露骨な性的誘いを受けてふり払った経緯があった。

 以降、毎日のように嫌がらせとも思える電話が入るが、今後の活動を考えるとどうしようもない。

 将人と会った日も、飯田からの着信があった。それがあるから、早めに引きあげざるを得なかったのだ。

 将人の存在に気づかれたら、彼に何をするかもわからない。だから飯田に怪しまれないよう早く家に帰り電話に出たのだが、将人には勘違いをされただろう。



 将人は真菜のことが気になり、迷惑かもしれないとためらいながらも電話をしてみると、彼女は「もう嫌だよ」とすすり泣いていた。



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 真菜のもとにかけつける将人。

 真菜はグループの解散や現状を告白する。



 部屋には懐かしい真菜の想いがあふれていた。

 寝息を立てる真菜の髪をなで、将人はこれから何度でも彼女の背中を押していく決意をする。

 夜が明けたらまた新しい光が差し込む。
 それと一緒にまた始めればいい。
 きっと何度だってやり直しはきく。
(p.190)
 山形の雪と東京の雪との対比で、幕。


――以上「真菜 21」ネタバレあらすじ



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ある意味、ベタ。



雪深いふるさとでの恋愛の終焉と引きかえに
都会へと夢を追って出ていく少女。

傷心をも田舎に置き去ってきたからか
失恋は淡い記憶と化し、ただなつかしさだけから
昔の彼女に軽い接触をはかる彼。

だが彼女は挫折し、折れかかっていた…。



ベタを承知の上で
最後にこれを配置したのだとしたら
いい意味でなかなか計算高い。(`▽´)

現実に打ちのめされて失速寸前となった少女を
むかしの恋人があらわれて支えることを暗示。

まさしく妄想爆発。(`▽´)

物語としてはこのくらいの淡さがいい。
さきざきのことを考えれば決して
楽観できる要素はないのだが、
彼の決意が物語を淡くやさしく結んでいる。

佳品である。



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蛇足。枕営業めいたくだりもある。

このあたりも逃げずに描いているところに
期待感を持てる。

逆に踏みこみすぎて生臭くなってしまうのも
考えものだが、そこまでは至っていないところも
バランス感覚のよさを見ることができそうだ。



このシリーズを書くにあたり、
アイドルの書いた小説は単なるアイドル本か?
という命題を提示し、その結論として
「まだよくわからない」と書いた。(`▽´)

そのとおり。

今後出版されるかどうかもわからない
内田眞由美の小説が、見るべきものなのか
そうはならないのか、正直な話、
まったくわからない。


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構成力やバランス、展開に問題がある作品も
散見される。何より現時点では短編のみ。

もちろん短編作家として大成する道もある。

あるいは、長編をものする可能性ももちろんある。
そしていうまでもなく、このまま消失していく可能性も。

資質はある。
その資質が、世に埋もれた多くの作家たちを
凌駕するものかどうかは知らない。興味もない。

ただ、資質だけでは大成はできない。

その意味で、作家・内田眞由美は
すでに誕生している。
この先に進めるか否かはつぎの作品にかかっている。

つぎの作品が出るかどうか、もあるけどね。

ともあれ、私は次回作を大いなる期待とともに
待ち望んでやまない。

少なくとも私は内田眞由美の書いた小説を
ただのアイドルの書いたアイドル小説などとは
思ってはいない。だから。



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つぎが、大きな正念場だぞ。( ̄ー ̄)



以上、内田眞由美祭りでありました! 楽しかった!
最後まで読んでくれてありがとう。
それでは、また~(^_^)/~~


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