2014/08/11

ふたつの思いを同時に抱き、ただ淡く等しく受けとめる - 「舞美 19」あらすじとレビュー(内田祭り第六弾)


おもしろい。おもしろいが好きかというと…?
青木無常でございますよー。


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さあ本日は内田祭りもいよいよ佳境!

内田眞由美著『言えない恋心』より
五編めの物語「舞美 19」のネタバレあらすじ
及びレビューでありますよ。

前作までの初読時、このままアイドルっぽく
いい子ちゃんの処女ばかり出てくる展開がつづくのかな、
とちょいと不安になってたりしたんですが、
杞憂にすぎませんでした。(`▽´)

別に処女ばかりのお話でもかまわないっちゃ
かまわないんだけど、いい子ちゃんぶってる印象が
ぬぐえなかったりするのはあまり得策じゃねえからな。(`▽´)



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   「舞美 19」ネタバレあらすじ


 週に一度、マンションに彼を迎える。

「お疲れさま」
 と言って私は彼に抱きつく。
「ちょっと、誰が見てるか分かんないんだからだめだろ」
 と彼は慌てた様子で私を離そうとするが、その姿が面白くてつい私は離れたくなくなる。
(p.130-131)
 食事(鍋)をしたあと、DVDを観る。
 どちらかがさきに寝てしまうのがいつものパターン。

 起きている方が風呂に入る。時間は深夜であることが多い。

 洗面台には、彼からのおくりもの。
 もらった時には子供のように喜んだ思い出がある。

 それでも、嬉しい感情を抑えることは出来ずきゃっきゃと本気で跳びはねたりしていた。
(p.133)
 ドライヤーで髪をかわかしてもらうこともある。

 私がわざと乾かしにくくなるように暴れると、じっとしていなさいと叱られた。
(p.133)
 わがままを彼は優しく受け止めてくれる。


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 眠るのはいつも明け方。

 そして朝、それぞれの仕事に出かける。仕事も恋人も守りたい。

 いけないことだと分かっていても、人ならば必ず誰かを好きになる。そして、その相手を大事にしたいという思いは、きっと誰にも抑えることはできない。
(p.136)

 浮気についての会話をかわしたことがある。
 舞美の見解としては、するならバレないようにしてといったところ。

 舞美自身には男友達は多い。そのことを特に気にしてはいない。

 気持ちまで揺れたならそれは、きっと終わりのときだ。
(p.138)


 将来はもっと大きなことをやってやる、という気持ちだけはあった。
(p.139)
 ただの意地かもしれない。
 埋もれて終わりたくない 負けたくない。
 自分にしか出来ないことを探し、見つけたい。



 店でダーツをしている男性にひかれる。後ろ姿が最初だった。

 彼は店の経営者で、連絡先を交換したが反応はなかった。



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 久しぶりにその店で友人と会うと、彼がくる。
 舞美は、わがままで自分勝手を貫き通す彼の“我”にひかれていた。



 その反動でか、恋人の彼との時間が減少していく。
 たまの電話も短時間に。
「早く寝たい」と嘘をついてお店の彼と会うようになっていった。



 ある日、お店の彼に呼ばれて、彼の仕事先の知り合い数人と個室の席で会食する。彼の知り合いによれば彼が女の子を連れてくるのは珍しいらしい。

 なぜ私を誘ったのと問うと、

「だって東京にきてから仕事以外の知り合いってお前だけなんだもん」
(p.149)
 彼のお店に寄った時も、二人でいると驚かれる。
 彼の言動の端々に、特別な関係を示唆する言葉がまじるが、あえて受け流す。



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 その一方で、恋人と会う日が怖くなっていく。

 そして恋人の彼との関係が、恋愛というよりは家族のように安定した間柄であることを舞美は自覚し始める。



 ある日、ひさかたぶりの恋人との夜、ふと目を覚ますと、彼に携帯を見られてしまっていた。

 嘘をついて知らない男と二人で会っていたことを彼は問い質す。以前にも同じことがあって、必ず連絡してからにする、と約束したのに、と。

 どうする、と問われる舞美。
 距離を置く、という選択をする。一ヵ月。

 私は頑張って笑って言った。一ヵ月後、私は泣いているかもしれない。恋人同士としてこんな風に彼の前で笑うのはきっと最後だ。私は玄関の扉を閉めて、歩き出した。
(p.156)

 その後、店の彼とも特に進展はない。
 思いは強いが、安心はなく、辛い。



 恋人の彼とのちがい。恋人の彼はすべて受け止めてくれた。

 つまりそれは恋愛の好きではなく、人として好きなだけかもしれなかった。



 でも後悔はしない。思い悩まない。
 二人ともに、今はいい友達。

 人は何度だって恋をするのだろう。もういいと思ったって、どれだけ傷ついたって。心は動いてしまう。きっと幸せな恋もそうじゃない恋も、この世界には溢れているのだ。
(p.159)


――以上「舞美 19」ネタバレあらすじ



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力作である。

恋人の彼との牧歌的な、それだけに
家族のようでもある交流が描かれる導入部と
ある意味奔放だがピュアでもある店の彼との
つかず離れずの関係との対比。

お店の彼が主人公を“特別”視するあたりの描写は
妄想感爆発してて別の意味でおもしろい(^_^;)。

ともあれ、安定した恋人との関係をつづける選択肢も、
あるいは恋人に秘密を貫き通す選択肢も捨て、
かといって店の彼に安易に乗りかえるわけでもない。

こういうことはあまり言いたくもないが、
ヲタでも感情的にうなずける内容でもある。

文学とかそういう方向での作法は知らないし、
逆に携帯小説などに代表されるであろう
いま風の恋愛小説も知らないけど。

少なくとも、この物語の主人公は
二人の男性のあいだで激しく揺れるほどでもなく
ただあっけらかんと思いのままに行動し、
選択していく。

迷いのない選択をすっぱりとしてしまうあたりが、
すがすがしいし、読んでいて嫌味がない。


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命題としては「いいひと」と「いい男」のあいだで
揺らぐ想い、という、ある種
オーソドックスすぎる命題なのかもしれない。

このあたりでどろどろとした展開をもってくれば
連続ドラマにでもなるのかもしれないが(^_^;)。



この物語の中にはもうひとつ、
埋もれて終わりたくない、何かをなしとげたい、
という命題も隠れている。

内田の所信表明めいた文章も散見される。

実際、以前もふれたとおり焼肉店のオーナーとして
女社長になりたいという自身の夢を
着実に実現しつつもある内田の書いた
文章だと見ると非常に興味深くもある。

だからこそ、なのかどうかは私には
うかがい知るすべもないがね。(`▽´)

ともあれ、安定したやさしい彼との人生も
新しい彼との新しい恋への進展もともに描かれぬまま
物語が結ばれているのもきわめて“ちょうどいい”。



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まあ恋をしない年齢になったのかもしれない
わしのような性欲だけが枯れ残った人間が
こんなことをしたり顔でいうのも
笑える話であるのかもしれないがね。(`▽´)

(誤読すんなよ。性欲は、残ってるんだから。(`▽´)
こういうとこ、誤読したがる人間多いからなあ。(`▽´))



ただし。
梨花 17」や 「優 16」のような
読後感のよい喪失感が不足気味ではある。


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その意味でいえば、よくも悪くもない、
といったところでもあるのカモしれん。



本日は以上です。次回は内田祭り最終回
最後まで読んでくれてありがとう。
それでは、また~(^_^)/~~


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