2014/08/07

気づくことすらできなかった恋心 - 「優 16」あらすじとレビュー(内田祭り第四弾)


これは切ないです。切ない恋物語。
青木無常でございますよ。


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というわけで、本日も作家・内田眞由美の
言えない恋心』から三編めの「優 16」について、
あらすじとレビューをいたします。




   「優 16」ネタバレあらすじ


 声優を目指す優は男の子が苦手だった。触りたくもなかった。



 小五の頃には、以前ほどは男の子を毛嫌いしなくなっていたのだが、友達だと思っていた同級生から告白されたことがきっかけで、再び苦手になってしまっていた。



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 そんな優の属するアイドルグループに、新メンバーとして沙羅という少女が加入する。

 女の子らしい沙羅を、最初は自分とは正反対の存在と感じていた
優だったが…。

 彼女もまた「男の人がすごく苦手」で中学の頃、女の子から嫌われたり、仲良くしていた男の子告白を断ったら思わせぶりと集団で責められたりした苦い経験があるのだという。

 怖くなって男の子と関わらなくなると、離れていた女の子たちも戻ってきて「誰も傷つかない」と思うようになったらしい。



 急激に仲良くなる優と沙羅。

 以前は他のメンバーとの溝を感じていた優も、沙羅が加入して以降埋まることとなり、ノエルでの活動も楽しくなっていく。



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 そんなある日、優は沙羅の家に泊まることになる。

 お風呂に入ったあと、沙羅のアルバムを見せられる優。

 …そこには、別人のような沙羅の写真があった。
 男子から集団で責められたり女子から嫌われていたころの、憔悴しきった少女。

「優には見てほしかった」

 アルバムを開示しながら、沙羅は優にそう告げるのだった。

 優もまた沙羅の隠されていた一面を知ることにより、一層の親しみを感じるようになっていく。だが…



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「沙羅と優はデキてる」

 いつからかそんな噂が飛び交い始める。。

 そして、突然目を合わせてくれなくなってしまう沙羅。
 おそろいのブレスレットもつけていないことに気づく。



 それでも優は沙羅への思いをなくすことはなかった。

 もしかしたら本当に沙羅のことが好きなのかもしれない。

 戻らないかもしれない関係に苦しみながら優は、そんな自分の心に気づくのだった。


――以上「優 16」ネタバレあらすじ



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同じ境遇から特別な想いを互いに抱くようになった親友。
それがきっかけでぎくしゃくしていた環境も好転した…
かに見えた矢先に訪れる、失速。
そして、だれも悪くすら、ない。



本作において同性愛的な心情が描かれていることに
「芸能界ってやっぱりそうなんだ」とか
「アイドルってこれだから」とか短絡しないでほしい。

そんなスキャンダラスな興味でしか
この物語を受け容れられないなら、
小説など読む必要はない。醜聞雑誌やそのテの本なら
今でも本屋にいけばいくらでもあふれ返っている。

文字どおり、そういった醜悪なゴシップ記事で満足していればいい。
(もちろん、それはそれで充分に“ゲスに”おもしろいことは
私だって逆に積極的に肯定するけどね)。

内田の描いた短編に描かれているものは
そういうものとは対極に位置するものだ。



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すなわち、喪失。



物語に喪失は不可欠、というのが私の意見、
というよりは作法そのもの。

その意味でこの物語は完璧。

外形だけ皮相的に受けとるなど
あまりにもったいない読みかたに他ならない。

最終段にちらりと触れられている
同性愛的かもしれないという心情の描写は
むしろ補足でしかないといってもいい。

むろん、そんなものはどうでもいいとか
なくてもいいとかいうつもりはない。


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肝心なのは、主人公が得たはずの心が
きわめて世俗的かつ簡単なきっかけで
喪失の危機に見舞われるということ。

そして、それでいてなお、その想いを
あきらめることも切り捨てることもできない…

…という切ない事実。

この先、沙羅の態度の急変は戻らないまま
二人の関係は永遠に修復できないのかもしれない。

それでも優は、沙羅を裏切りものと糾弾することも
憎むこともないだろう。沙羅の心の葛藤を
容易に想像できるだけに。


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逸品である。
幕開けの「梨花 17」とともに
この短編集の白眉といいたい。



本日は以上です。
最後まで読んでくれてありがとう。
それでは、また~(^_^)/~~


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