2014/08/09

届かない恋心と、その影にひそむ見えなかった感情 - 「律 15」あらすじとレビュー(内田祭り第五弾)


本日の作品は、若干低空飛行気味。
青木無常でありますん…。


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というわけで、内田眞由美祭りも五回めとなりました。
本日は『言えない恋心』の四つめの短編の
ネタバレあらすじとレビューですよ。




   「律 15」ネタバレあらすじ


 アイドルグループ「AriA」のセンター・律は問題児だった。

 いつも集合時間に遅れてくる。
 誰とも目を合わせない。

 距離を近づけようとしない律にほかのメンバーは反発も感じたが、たまに自分勝手でもステージでの輝きはすばらしく、誰も普段の生活態度に口出しできない。

 以前はそれなりに普通に接していたのだが、デビュー曲のセンターに決まった頃から、律は他のメンバーと距離を置くようになっていたのだ。



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 そんな律を、ユリカはかばう。

 ほかのメンバーも、度が過ぎる時は注意しようと約束を交わし、律を受け入れるようになる。

 が、その約束を忘れたのか、一周年をむかえようという今、みんなが諦め始めているようにユリカは感じているのだった。



 マネージャー広瀬の趣味半分で、律は「ken」というアーティストのライブにいく。
 そしてkenの笑顔に心ひかれてしまう。

 後日、やはり広瀬がらみで再会したkenからアドレスを受け取る。kenには彼女はいないらしい。



 そして律は、広瀬に頼んでkenからギターを習うことになる。

 さらに、広瀬には秘密でkenのスタジオに通うようになる律。



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 事情は知らないながらも、ユリカは律が離れていくように感じる。



 そんなユリカの思いにも気づかぬまま、ついにはkenのマンションにおしかけてしまう律。
 そのまま強引に泊まる。別々に寝るが、律は自分の気持ちに気づいてしまう。



 律の生活態度の変化に、メンバーがついに反発する。困窮する広瀬。



 ken宅に入りびたる律。
 だがkenの仕事が忙しくなっていく。

 同時に、広瀬から宣告を受ける。
 センターから外す、と。

 オーディションで新センターを選ぶという。



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 律は泣きながらkenに電話する。

 が、来てと頼むと
「これから彼女の迎えなんだよ!」
 という不機嫌な思わぬ反応が返ってきてしまう。



 センターを外されたことを心配して、ユリカが律の家を訪れる。
 そこで律は、メンバーと距離を置いた理由を語る。

 Ariaの以前に他のグループの候補生だった時、表と裏のギャップやセンターの子への陰口、辛そうなその子の様子などを見てセンターにはなりたくないと思ったのだ、と。

 Ariaでセンターになり、

「人見知りだけど、出来るならみんなと仲良くなりたかった」
(p.124)
と心の中では思っていた律だったが、その勇気は出なかった。

 逆に最初から誰も信用しないと決め、壁をつくり、自分を守ろうとした。



 そんな律の告白に、ユリカは、律は背中で語ってたと告げる。
 みんな律のこと大好きだと。



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 律はメンバーに謝り、和解する。

 そして、お互いの気持ちが通じ合ったステージに立つことができるようになる。



 kenに惹かれたのは、誰かに自分を分かってほしいという寂しさからだったと気づく。



“仲間”を得られて全力で走れる、と決意する律。


――以上「律 15」ネタバレあらすじ



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本作においては、まずユリカの存在がアンバランス。

後の展開を考えればユリカが必要不可欠な
登場人物であることは確かに明白。

それだけに、律とユリカとの絆が
きちんと描かれていないことがアンバランスの
巨大な要因と化してしまっている。

本作においても「ken」との出会いや
ひかれていく過程などはきちんと描かれているし、
ほかの作品を読む限りでもユリカとの
エピソードを構築できるだけの力量は内田にはある。

はず。であるにも関わらず、ユリカが
唐突に律寄りであることを地の文で言及しているだけで、
二人のあいだの絆がまったく描かれていない。

なんらかのエピソードをはさみこんで
ユリカが律を信頼するようになる過程を
きちんと描きこんでおくことが理想だが、
それがないとしても方法はほかにもある。


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たとえば物語クライマックスで、だれもが
無愛想な律の背中を見てその心をおぼろげにでも
理解していたという文言がある。

そのあたりを利用して、前半部のどこかで
律の真情がほかのメンバーにも伝わるような
場面なりエピソードなりをきちんと
描いていてしかるべき。

少なくとも、ユリカだけでも。

でなければユリカが律を信頼している設定が
設定として語られているだけで説得力が
まるで発生していない。

そのあたりを読者の想像に委ねる、などという考えが
もしあるのだとしたら、それは怠慢以外のなにものでもない。

物語は設定をダイレクトに提示しても
読者の感情移入を阻害するだけ。
設定を裏づけるエピソードなり描写なりが
どこにもなければ読者は唐突感を抱くばかりである。



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また、ユリカのみならず最後は
ほかのメンバーとも和解する
という展開からすれば。

もちろん、ほかのメンバーとのエピソードも欲しいところ。

たとえば律を糾弾する急先鋒的なメンバーも
前半部あたりできっちりと描写しておくとか。

ユリカとともに律が和解に向かう場面で
そのメンバーと言いたい放題の言い合いをさせる等の
段階がほしい。

もっとも全体のボリュームからして
このあたりを描きこむとバランスは崩れる。

ほどよいところで描きこみすぎず
かといって説明不足にはならない程度に
なんらかの仕掛けを仕込むのは確かに難しい。

むつかしいが、だからといって説明不足のまま
上辞するいいわけにはならない。決して。



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以上が、この短編におけるもっとも重大な欠落。

以下は、それほど重大ではないが若干
もの足りないと私が感じた部分。



ken宅に律が入りびたりながら肉体関係がない
という部分が若干微妙。もちろん絶対的にまずい、
というほどではないが、プラトニックに徹する意味を
あまり感じられない。

アイドルの恋愛を描いている以上、
そこに肉体関係があるかないかは
本質的には大した問題ではない。

だからこそ、ここでそれを避ける意味がわかない。

そこに拘泥する意味も確かにないので
「若干」という表現を用いはした。

が、男性宅に押しかけて誘われてもいないのに
泊まっていくといってきかないほど積極的な主人公が
男女の関係を想定していないとは考えがたい。

kenにしても、彼女がいることを律に告げていなかった等、
あまりいい人ともいえない。


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律を女として見ていなかったとか
実はほとんど相手にしていなかったとか
そういう部分を描きたかったのかもしれないが、
それならそれで中途半端にも思える。

物語的にはkenが遠慮なく律を抱いてしまうほうが
起伏は明らかに大きい。実はkenには彼女がいたのだという
事実が開示された時の衝撃(つまり落差)もより鮮烈にできる。

別にアイドルを主人公にしているから
もっとスキャンダラスな内容にしろというつもりも
毛頭ないけど、この場合は清純さを強調するのも
戦略的に特に意味が見出せない。

ほかの作品でも一貫して肉体関係を排除している
というのなら多少は印象もかわっただろうが、
実際はそうでもない。



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仮に。
あくまでも、仮に、だが。(`▽´)

この物語が、事実に基づいて描かれているのなら
それはそれで理解はできる。こういう流れで
実体験として経験したのであれば、そのまま描きたい
という心情は充分にあるだろう。

だが公称どおり“99パーセント”の想像から
この物語が構築されているのだとしたら。

kenはもっとゲスに描くべきなのではなかったか。

美しく描きたかったのであれば、
彼女の迎えなんだよ! などという強い口調で
不機嫌むきだしに結ぶあたりが邪魔。

これから渡米するから時間がないとか
そういう“きれいな”いいわけでもさせておけばいい。

…と、思う。(^_^;)



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もひとつ。以前所属していたアイドルグループでの
エピソード。

足りない、とまではいわないけど、
若干唐突カモしれない。蛇足的にならないように
早い段階でさわりだけでも埋め込む…
のも至難のわざだがね。(`▽´)



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全体の感想としては、悪くはないんだけど
構成不足。もっと削るか描きこむか、
どちらかが必要だったと思われます。



上から目線? もちろんそのとおり! ( ̄ー ̄)



本日は以上ですよ。
最後まで読んでくれてありがとう。
それでは、また~(^_^)/~~


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